2012年11月09日
母子生活支援施設
前々から、母子の生活支援に関わっている方から勧められていた 新宿区立かしわヴィレッジに伺う。そこは母子寮で児童福祉施設である。
DV被害、子ども虐待の報道が後を絶たない中で、、実は全国的にこれらの支援施設が廃止の危機にあっているという。
人目に隠されている施設だが、その社会的なニーズは確実に高まっている。でも受け入れ側が管理体制になっていると廃止方向になりやすいという。しかし行政の役目は、そういうところにこそ手を差し伸べるべきで、社会的意義と責任は大きい。
今回はそんな中で大きな成果を上げている施設を訪問した。
住宅街の中にあり、特別養護老人ホームの一角にある。
DV被害者の避難場所として、また緊急一時保護施設として取組んでいる。
玄関を入るとまず目を引くのはクマのPOOさんの歓迎
そしてお部屋を見せて頂く。緊急一時避難の方用には日常品が整備されている。
この施設に来る時には、どの母子も臨戦態勢で来ると言う。そんな戦闘状況のままここに来てるからといって、この時にそっと静かに見守るのではなく、この1ヶ月間の中でどう関わるか、頼ってもいいんだよと思ってもらえる信頼関係を作ることが大事であり、この1カ月間に全てを話す関係を作るという。
そして居住期間は2年間。学童保育もあり、この間に自立の道を見つける。母親の自立はもちろんだが、子どもの心のケアと成長もサポートしている。
その中で特筆すべきことは、無料塾「かしわ塾」の存在である。毎週水・土曜日に学生ボランティアが中心になって勉強をみている。
大切にされるという体験や人って優しいと実感することの少なかった子どもたちが、今まで出会ったことがない大人たちと出会う場所がかしわ塾であり、大学進学の支援や高校に通い続けるための支援も担っている。
伝えたい気持ちを受け止めてくれ人も、大切にされる実感もなく、困った時に助けてもらえる安心感もないまま、子ども期を通り過ぎていこうとする子どもたち。
そうした子どもたちが、子ども期の福祉を取り戻せる場所として、学習と言う要素を用いて、学力向上だけではなく、子どもたちの自己肯定の回復支援も行っている。
だからこそ、退所した子どもたちの多くが、今でもここに来ているという。きっと心の拠り所になっているのだろう。
-----------------------終わりに施設長の言葉を転記する。----------------------
繋がりを持たない自立を孤立と呼ぶ。貧困がもたらす様々な不利は、子どもたちからその繋がりさえ奪っていく。
人と人が繋がることに近道は存在しない。
特に人とのつながりの中で深く傷ついた子どもたちが持つ、繋がることへの根強い不信感や緊張感、戸惑いは、計り知れないものがある。
人間関係の中で傷ついた心は、人間関係の中でしか癒せない。
また、大人や社会への不信感は、大人との関係性の中でのも、「信頼できる大人、信頼できる社会」へと修正が可能となる。
「煩わしい事はいっぱいあるけれど、やはり人間関係は捨てたものではない」ことを伝えることができる「場所」と「人が求められている。
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施設長を始め、児童福祉に情熱を傾けるスタッフがいるからこそ、損得勘定のできない人たちだからこそ、ここが運営できていることも事実である。